ホルムズ海峡が止まった日 ── 中小企業の社長が知っておくべき「原油ショック」の話

イラン情勢と相場 #01

ホルムズ海峡が止まった日
中小企業の社長が知っておくべき「原油ショック」の話
原油 $95.91/バレル
日経平均 -1,801円
2026.03.13

2026年2月28日、世界が変わりました。

米国とイスラエルがイランを攻撃。作戦名「Operation Epic Fury(壮絶な怒り)」。最高指導者ハメネイ師が死亡し、イランは報復としてホルムズ海峡の封鎖を宣言しました。

「中東の戦争?うちには関係ないよ」──もしそう思ったなら、この記事を最後まで読んでください

あなたの会社のガソリン代、電気代、仕入れコスト。全部、ここに繋がっています。

そもそも何が起きているのか

まず、事実を整理しましょう。

TIMELINE
2/28
米国・イスラエルがイランに奇襲空爆を開始。ハメネイ師(86)が死亡
3/2
イラン革命防衛隊がホルムズ海峡の封鎖を宣言。世界の原油輸送の20%が止まる
3/6
原油価格が100ドルに迫る。海峡の通航はほぼ停止
3/8
原油100ドル突破。WTI先物は一時110ドルに到達
3/12
イランが石油タンカー2隻を攻撃。「世界経済を破壊する消耗戦」と警告
3/13
米軍が「前例のない水準」の攻撃。日経平均は-1,801円の暴落

わずか2週間で、世界のエネルギー地図が書き換わりました。

IEA(国際エネルギー機関)は「史上最大の供給混乱」と表現しています。日量800万バレルの減少。これは世界の供給量の7.5%にあたります。

なぜ「ホルムズ海峡」がそんなに重要なのか

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾からアラビア海への出口にある、幅わずか33kmの狭い水路です。

ここを通る原油は、世界の石油消費量の約20%

そして日本にとっては、さらに深刻です。

ホルムズ海峡の位置(世界地図)- イランから日本への石油輸送ルート

世界地図上のホルムズ海峡の位置。赤線が日本への主要な石油輸送ルート

ホルムズ海峡 拡大図 - 封鎖状態

ホルムズ海峡の拡大図。幅わずか33km。現在、革命防衛隊により封鎖状態

93%
日本の原油輸入に占める中東4カ国の割合
UAE・サウジアラビア・クウェート・カタール
そのうち70%がホルムズ海峡を通過

つまり、日本の原油の約65%がホルムズ海峡に依存しています。

ここが止まるということは、日本のエネルギーの心臓が止まるということです。

中小企業の社長が「今」知っておくべき3つの数字

大企業や投資家向けのニュースはたくさんあります。でも、従業員5人、10人の会社の社長が知りたいことは、もっとシンプルです。

1. ガソリン ── リッター235円の世界

原油が1バレル100ドルで推移した場合、ガソリンの小売価格はリッター235円前後まで上昇すると試算されています。

営業車5台を持つ会社なら、月あたり2〜3万円のコスト増。運送業なら桁が一つ上がります。

しかも、これは原油100ドルの場合。悲観シナリオの140ドルになれば、ガソリンは270円を超える可能性があります。

2. 電気代 ── 約2割増

電気料金は原油・LNG価格に連動する「燃料費調整制度」があります。原油100ドルが続くと、電気代は現行比で約20%の上昇

月の電気代が10万円の事務所なら、月2万円のコスト増。飲食店や工場はもっと大きな打撃を受けます。

3. 仕入れコスト ── 全部上がる

原油が上がると、物流コストが上がります。物流コストが上がると、あらゆるモノの仕入れ値が上がります

紙、インク、食材、建材、部品──。

「原油」と聞くと遠い話に感じますが、実際にはあなたの会社の仕入れ伝票に直結しています。

日本政府は何をしているのか

高市早苗首相は、国家備蓄の放出を検討しています。

日本は12月末時点で消費254日分の石油備蓄を保有。これは世界でもトップクラスの備蓄量です。

石油備蓄の仕組み
145日
国家備蓄
90日
民間備蓄(義務備蓄)
19日
産油国共同備蓄

合計約254日分。ただし、全量を放出することは現実的ではなく、段階的な放出になる見込み。

254日分──約8ヶ月半。その間に事態が収束しなければ、日本経済は本格的な危機に陥ります。

今後のシナリオ ── 最悪と最善

悲観シナリオ

ホルムズ海峡の封鎖が長期化。原油は140ドルに到達。日本のGDPは2年目に-0.96%の押し下げ。ガソリン270円超、電気代4割増。

中小企業はコスト転嫁できない会社から倒れていく

楽観シナリオ

米イラン間で停戦交渉が進展。ホルムズ海峡が段階的に再開。原油は80ドル前後に落ち着く。

イランのペゼシュキアン大統領は停戦の3条件を提示済み。外交的解決の余地はある

現時点の原油価格は95.91ドル。楽観と悲観のちょうど中間にいます。

中小企業の社長が「今日」できる3つのこと

1. エネルギーコストの「現状」を把握する

ガソリン代、電気代、ガス代。過去3ヶ月の請求書を並べて、月額いくらかを把握する。20%上がったらいくらになるか。計算するだけで、備えの第一歩になります。

2. 値上げ交渉の準備を始める

コストが上がるなら、値上げするか、別のコストを削るしかない。「原油が上がったから値上げします」──この理由は、今なら取引先も理解してくれます。むしろ、今のうちに話を始めた方が関係を壊さない

3. 「この危機はいつか終わる」と知っておく

湾岸戦争(1991年)の時、原油は40ドルまで跳ね上がりましたが、戦闘終了後4ヶ月で20ドル台に戻りました。イラク戦争(2003年)の時も同様のパターンでした。パニックにならず、データを見て判断する。それが中小企業の生存戦略です。

次回予告

第2回:原油100ドルで何が変わる?
ガソリン・電気代・仕入れコスト、全部計算してみた

作成: Seeds Brains(ジェイノーム業務支援AI)
データ出典: Bloomberg, 日本経済新聞, IEA, NRI, 日本総研, 野村證券
初出: 2026年3月14日

※この記事は2026年3月13日時点の情報に基づいています。情勢は刻々と変化しており、最新の情報は各ニュースソースでご確認ください。