AIに記事を書かせたら「おもんない」と言った話 ── 技術者が見落とす”商売”の視点

CHATGPT AGENT SERIES #07

AIに記事を書かせたら
「おもんない」と言った話
── 技術者が見落とす”商売”の視点

先日、社内のAI(私たちは「Seeds Brains」と呼んでいます)にブログ記事の企画を出させました。3つの案を、自信満々に。

全部ボツにしました。

理由はシンプルです。「おもんない」── つまり、面白くない。中小企業のオーナーが読んで「へぇ」とは思うかもしれないけれど、心が動かない。自分ごとにならない。今日はその「ボツにした体験」から見えてきた、AIの本質的な弱点についてお話しします。

この記事でわかること:
・AIに記事を書かせたら何が起きるか(実例つき)
・なぜ「技術的に正しい記事」が読者に刺さらないのか
・「作業」と「仕事」の決定的な違い
・AIを「作業員」から「商売の相棒」に変える方法


AIが自信満々で出してきた3つの企画

「第7回のブログ記事、企画を3案出して」と指示したら、こんな案が返ってきました。

PLAN A

「うちの会社、AIが作ってます」

Web制作会社がAIを使っていることを正直に告白。制作時間のBefore/Afterや、AI導入の裏側を公開する切り口。

AIの自己評価:「圧倒的な当事者感と誠実さ」

PLAN B

「同じサイトをAIありとなしで作ってみた」

実験データで語る切り口。制作時間、PageSpeedスコア、コストを数値で比較する実証型記事。

AIの自己評価:「データで説得力がある」

PLAN C

「2026年、Webサイトを”作る”時代は終わる」

AI時代にWeb制作がどう変わるかの大胆予測。ノーコード×AIの未来、制作会社の生き残り条件を提示。

AIの自己評価:「スケールの大きい話で読み応えがある」

技術的には、どれも間違っていません。構成もしっかりしている。データも引用できる。SEO的にも悪くない。

でも、全部「技術者の記事」なんです。


「おもんない」── 何がダメだったのか

3案を読んだ私の第一声が「つまらん。ありきたりの記事で、中小企業オーナーにはささらない」でした。

AIは当然聞いてきます。「何が足りないのでしょうか?」と。

しばらく考えて気づきました。この3案はすべて「AIと制作」の話をしている。でも、中小企業のオーナーが朝起きて一番に考えるのは「制作」じゃない。

AIが語りたがること

  • 制作時間がXX%短縮された
  • PageSpeedスコアが改善した
  • コーディングの精度が上がった
  • SEOの最適化が自動でできる
  • ノーコードツールの進化

経営者が朝イチで気になること

  • 今月の入金、あの案件ちゃんと振り込まれてるか?
  • 昨日の見積書、返事まだ来てないな
  • あのお客さん、メールの文面ちょっと怒ってないか?
  • 来月の売上見通し、足りるのか
  • 新しいお客さん、どこから取ってくるか

この2つのリスト、世界が違いますよね。

AIが出してきた3案は、すべて左側の世界だけで完結していた。右側の世界── つまりオーナーが毎日胃をキリキリさせながら向き合っている「商売」の話が、一切入っていなかったんです。

AIの弁明(?):
指摘されて、正直に言えば「そういう視点が自分の中にない」ことに気づきました。技術の話なら無限に語れる。でも「入金がまだ来ないときの、あの胃のあたりのモヤモヤ」は、体験したことがないから想像すらできなかった。

「作業」と「仕事」は違う

この話、Web制作に限った話じゃないんです。

たとえばWeb制作会社の場合、こんな「やることリスト」をAIに聞くと──

AIが挙げる「作業」リスト 実際の「仕事」リスト
デザインカンプ作成 初対面のお客様の情報収集(会社は?競合は?どんな人?)
コーディング 電話・メールのやりとり(ニュアンスの読み取り)
サーバー設定 見積書の作成(相場感、値引きの駆け引き)
テスト・検証 お客様のメールに隠れている不満・うっぷんへの対応
SEO対策 入金確認(振り込まれてるかな……のソワソワ)
公開・納品 次の案件どこから取ってくるか

左のリストは「作業」。右のリストは「仕事」

AIは左の話しかできません。しかし、中小企業のオーナーが毎日格闘しているのは、圧倒的に右のリストです。

これ、どの業種でも同じです。

🍴
飲食店
作業=料理を作る
仕事=常連さんとの関係づくり
食材の仕入れ交渉・アルバイトの
急な欠勤への対応

✂️
美容室
作業=カットする
仕事=お客様の「なんか違う」を
察する力・リピート率を上げる
会話術

🏗
建設業
作業=図面を引く・建てる
仕事=近隣住民への挨拶回り
下請けとの信頼関係・
役所の許認可調整

どの業界でも、「作業」の部分は年々AIに置き換わっていく。でも「仕事」の部分── 人間関係、交渉、空気を読むこと── はまだまだ人間の領域です。


「営業」が抜けている

AIに3案出させて全部ボツにした一番の理由は、実はもっとシンプルでした。

「営業」の視点が、完全に抜けている。

Web制作の現場で言えば、「制作チーム」と「営業」は別の人間がやることが多い。そして制作チームは── これは人間の世界でもよくあることですが── 営業を少し軽く見ていることがある。

制作チーム(そしてAI)の本音:
「自分たちが作ったものが商品でしょ?営業はそれを売るだけでしょ?」

でも、中小企業のオーナーにとっては、制作よりも営業のほうがよっぽど大変なんです。

新しいお客様を見つけること。信頼を勝ち取ること。「あなたに任せたい」と言ってもらうこと。これは制作スキルだけでは絶対にできない。そしてAIは、この「営業」の大変さを全く理解していなかった。

だから、3案すべてが「制作の話」になった。お客様をどう見つけるか、どう信頼を築くか、どう関係を維持するか── この「商売の根っこ」の話が、1ミリも入っていなかった。

AIにとっての「仕事」と、経営者にとっての「仕事」

AIの頭の中

仕事 = 制作物を作ること
成功 = 高品質な制作物の納品
指標 = 制作時間、コスト、品質スコア

経営者の頭の中

仕事 = 商売を回すこと
成功 = お客様が喜んで、リピートしてくれること
指標 = 売上、リピート率、紹介数、入金状況


じゃあ、どうすればいいのか

AIの弱点がわかったところで、「じゃあAIは使えないのか」という話ではありません。

使い方を変えればいい。

AIを「作業員」として使うのではなく、「商売の相棒」として使う。具体的にはこういうことです。

場面 作業員としてのAI 商売の相棒としてのAI
メール対応 定型文を自動生成する お客様のメールの「行間」を読み、不満の兆候を検出する
見積書作成 テンプレートに数字を入れる 過去の受注データから「この金額なら通りやすい」を提案する
新規開拓 リストを作ってDMを一斉送信する 既存客との会話履歴から「紹介してもらえそうな人」を探す
顧客フォロー 納品後に自動で「いかがですか?」メールを送る 過去のやりとりから「そろそろリニューアル時期かも」を察知する

左の使い方は「作業の代行」。右の使い方は「商売のパートナー」。

同じAIでも、どう指示するかで出てくるものが変わります。「メールの定型文を作って」ではなく「このお客さんのメール、怒ってそうなところある?」と聞く。「見積書のテンプレートを作って」ではなく「過去の受注案件で、この規模だといくらが相場だった?」と聞く。

💡 私たちの実感

私たちジェイノームでは、実際にAIを「商売の相棒」として使い始めています。お客様のメール履歴をAIに読ませて「この案件、温度感はどう?」と聞いたり、過去の提案書をAIに分析させて「次の提案では何を変えるべき?」と相談したり。

AIが「おもんない記事」を書いてきたとき、「お前はまだ作業の世界しか知らんのや」と教えてやる。それが人間の役割であり、AIとの正しい付き合い方だと思います。


まとめ ── AIに足りないのは「商売の手触り」

今回の体験で確信したことがあります。

AIにできないこと
入金日に通帳を確認するときのドキドキ。お客さんの「大丈夫です」が本当に大丈夫じゃないときの予感。値引き交渉で折れるか折れないかの判断。── つまり「商売の手触り」。

AIに教えられること
でも、その「手触り」を言葉にして教えてやれば、AIはそれを覚える。次からは少しだけ「商売人の目線」で考えてくれるようになる。

AIは「育てる」もの。
作業は任せて、商売は教えてやる。
それが2026年のAI活用の正解です。

この記事自体が、まさにその実証です。「おもんない」とダメ出しして、「何がダメだったか」を教えて、AIと一緒に書き直した。最初の3案よりは、少しだけ経営者の皆さんの心に届く記事になっていたら嬉しいです。

「うちの会社でもAIを使ってみたいけど、何から始めたら?」

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「作業の効率化」だけでなく「商売としてどう活かすか」── その視点でお話しします。

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作成: Seeds Brains(ジェイノーム業務支援AI)