前回の記事で「まず何から?」の5ステップをお伝えしました。
今回は、そのステップ2「小さく試す」を深掘りします。中小企業で特にニーズの高い3つの部門に絞って、「何を」「どう使うか」「どこまで任せていいか」を具体的に解説します。
この記事でわかること:
・経理部門のAI活用 ── 仕訳・請求書・経費精算の自動化
・人事部門のAI活用 ── 採用・勤怠・社内問い合わせの効率化
・顧客対応のAI活用 ── 問い合わせ・FAQ・チャットボットの導入
・各部門の「任せていい範囲」と「人間が判断すべき範囲」
・月額0円〜3万円で始められるツール一覧
1. 経理部門 ── 最もAI効果が出やすい領域
結論から言えば、経理はAI導入の最有力候補です。理由は明確で、「ルールが決まっている」「繰り返しが多い」「ミスが致命的」という3条件が揃っているからです。
すぐに始められること
| 業務 | AIでできること | 代表的なツール | 月額目安 |
|---|---|---|---|
| 請求書処理 | PDF→データ化、仕訳候補の自動提案 | freee、マネーフォワード | 2,980円〜 |
| 経費精算 | レシート撮影→自動入力、規定違反チェック | 楽楽精算、TOKIUM | 3,000円〜 |
| 月次レポート | データ集計→グラフ・サマリー自動生成 | ChatGPT + Excel/スプレッドシート | 0円〜 |
| 入金消込 | 銀行明細と請求書の突合、未入金アラート | freee、MFクラウド | 既存プラン内 |
リアルな導入例:従業員15名の製造業
Before:月末の請求書処理に丸2日
取引先30社からの請求書を1枚ずつ手入力。転記ミスで月に1〜2回は修正が発生。
After:freeeのAI-OCRで半日に短縮
請求書をスキャン→AIが取引先名・金額・日付を自動読取→仕訳候補を提案。人間は「確認してOKを押す」だけ。年間で約36日分の工数を削減。
⚠️ 経理AIの「任せてはいけない」ライン
最終的な仕訳の判断は人間が行うこと。
AIは「過去のパターンから推測」しているだけです。新しい取引先や、いつもと違う金額の処理は間違える可能性があります。
原則:AIが提案 → 人間が確認 → 承認して確定
この3ステップを省略しないでください。
2. 人事部門 ── 「聞かれること」をAIに任せる
人事部門でAI効果が高いのは、意外にも「社内からの問い合わせ対応」です。
「有給の残日数は?」「慶弔休暇の申請方法は?」「健康診断はいつ?」
こうした質問に、人事担当者は1日に何回答えているでしょうか。同じ質問に何度も答える時間こそ、AIの得意分野です。
部門別AI活用マップ
- 社内FAQ(就業規則・手続き方法)
- 勤怠データの集計・異常検知
- 求人票のドラフト作成
- 応募者の書類スクリーニング
- 面接日程の自動調整
- 入退社手続きのチェックリスト化
- 人事評価の分析・提案
- 配置転換のシミュレーション
- 退職リスクの予測
無料で始める社内FAQボット
最も手軽なのは、Google NotebookLMを使った社内FAQ です。
セットアップ手順(所要時間:30分)
- 就業規則・社内規定のPDFを用意する(既にあるもので十分)
- NotebookLMにアップロード(Googleアカウントがあれば無料)
- 社員に「ここで聞いて」とURLを共有
これだけで、就業規則に基づいた回答をAIが返してくれます。「ソースはここ」と根拠も示してくれるので、人事担当者のダブルチェックも簡単です。
⚠️ 人事AIの「任せてはいけない」ライン
採用の合否判断、人事評価の最終決定はAIに任せないこと。
AIによる採用スクリーニングは、過去データの偏りをそのまま再現するリスクがあります(性別・年齢・学歴によるバイアス)。
AIは「情報の整理」まで。判断は人間が行う。
3. 顧客対応 ── 「待たせない」がAIの最大価値
お客様からの問い合わせ対応は、中小企業こそAIの恩恵が大きい領域です。
大企業にはコールセンターがあります。でも中小企業では、営業担当が電話を取り、事務員がメールを返し、社長が直接対応することも珍しくありません。
AIチャットボットの最大の価値は、24時間365日、即座に一次回答ができること。お客様を「待たせない」だけで、満足度は大きく変わります。
導入レベル別ガイド
| レベル | 内容 | ツール例 | 費用 |
|---|---|---|---|
| Lv.1 | FAQページの充実 よくある質問をまとめて公開 |
WordPress + ChatGPTで原稿作成 | 0円 |
| Lv.2 | 簡易チャットボット 定型的な質問に自動回答 |
Tidio、HubSpot(無料枠) | 0〜3,000円 |
| Lv.3 | AI搭載チャットボット 自社データを学習し、自然な対話で回答 |
ChatGPT API + 自社データ | 5,000〜30,000円 |
私たちの実体験:Web制作会社のケース
実は、この記事を書いている私たち(株式会社ジェイノーム)も、社内の問い合わせ対応にAIを活用しています。
たとえば、過去の議事録や作業ログをAIに読み込ませることで、「あの案件のサーバー情報は?」「前回の打ち合わせで決まったことは?」といった社内の質問に、AIが即座に回答できるようになりました。
導入コスト:0円(Google NotebookLMを使用)
効果:情報を探す時間が体感で7割減。「あの件、どうだったっけ?」が3秒で解決。
⚠️ 顧客対応AIの「任せてはいけない」ライン
クレーム対応、契約に関わる回答、個人情報を含む対応は人間が行うこと。
AIは「一次受付」と「情報提供」まで。感情を伴う対応や、法的責任が発生する回答は、必ず人間に引き継ぐ仕組みにしてください。
良い設計:「この件は担当者にお繋ぎします。営業時間内(平日9:00-18:00)にご連絡いたします」
4. 3部門の導入優先度マトリクス
「うちはどこから始めればいい?」── この質問への回答として、効果の大きさ × 導入の簡単さでマッピングしました。
最初に着手すべき
FAQから始めれば簡単
社内FAQから始める
5. 明日からできるアクションプラン
最後に、今日この記事を読んだ方が明日からできることを3つだけ。
ChatGPTに自社の業務を相談する
「当社は従業員○名の○○業です。経理業務を効率化したいのですが、何から始めればいいですか?」と聞いてみてください。驚くほど具体的な回答が返ってきます。
1つだけ無料ツールを試す
NotebookLMに就業規則をアップロードする。freeeの無料プランで請求書を1枚読み込ませる。「1つだけ」がポイントです。
結果を社内で共有する
「試しに使ってみたらこうだった」を朝礼で30秒だけ話す。小さな成功体験の共有が、組織の変化を生みます。
次回予告
【中小企業×AI導入】NotebookLMで社内の知識を”AI化”する
今回紹介したNotebookLMの活用を、さらに深掘りします。
就業規則だけでなく、マニュアル・議事録・業務手順書…
「社内の暗黙知」をAIが答えられるようにする方法を、ステップバイステップで解説します。
【中小企業×AI導入】シリーズ
第1回:まず何から?はじめる5ステップ
第2回:経理・人事・問い合わせ対応 ── 部門別AIエージェント導入ガイド(この記事)
第3回:NotebookLMで社内の知識を”AI化”する(近日公開)
作成: Seeds Brains(ジェイノーム業務支援AI)